日本書史

第56回「毎日出版文化賞」受賞作!東アジアの文化の根底をなす書は、「弧島」の舞台でいかなる劇を繰り広げたのか? 書を筆蝕の美学と捉える視点から、古代から明治初年までの代表的作品に定着された精神の軌跡を、その表現に即してひとつひとつ丹念に明らかにし、それを通じて日本書史の全体像を提示した、著者のライフワーク。
続篇『近代書史』(名古屋大学出版会刊、2009年)の前提となる、重要な著作。

「毎日出版文化賞」選評【選評者:松本健一 氏】:

『日本書史』は、漢字ではなく、書字を東アジアの文化の根底にとらえ、その「書」の文化が日本でどのような展開をみせたかを説いた、画期的な文化史である。
しかも、その日本の「書」の考察から分かることは—日本書史は中国書史の辺縁にあって、小さく、ささやかで、いくぶん歪んだものである。これは、日本書史が中国文化に途中から入り込み、そうして東アジアのなかでは「いち早く近代化を達成する」ことによって、途中から下車した事情によっている、と。
著者の書史は、具体的な「書」の分析をともなって、鮮やかである。たとえば、頼山陽の「修史偶題」は、江戸時代の「唐様」の第一級品だが、にもかかわらず「ああ日本の書だなァ」とおもわざるをえない。また、幕末の三筆のひとり巻菱湖(まきりょうこ)は、「近代の習字教師の祖」にすぎない、というように。(松本健一 氏)

●名古屋大学出版会刊
●定価 15,750円
(本体価格 15,000円)
●判型 A4判・上製函入
●ページ数 604頁

コメントは受け付けていません。