二十一世紀の巨大木簡 石川九楊
現在の加藤堆繫君の作品群には二つの方向性がある。
ひとつは長いキリ(錐)で刻りこむかのような筆蝕で、水平、垂直の筆画を構成する作品。ここには、書から遠心して、抽象絵画のそのまだ先の未知の世界へ進まんとする試行が広がり、文は容易にその判断を許さない。
他のひとつは逆に文として読まれんとする姿を回復せんとする求心的指向。化粧バケ(刷毛)がさっとふれただけのかすかな筆蝕からグリグリと木ネジ(螺子)のようにねじこみ、圧しこむまでの多彩な筆蝕が、流体的な旋律を奏でている。
若き日、ニューヨークで世界の若者達と現代美術の制作と研究に明け暮れていた加藤堆繫君は、やがて画筆を捨て、日本に戻り再び書の筆を手にするようになった。ひとつの作品が、短冊形ならぬ長冊型の巨きな数枚の紙(聯)から成っているー1枚が1本つまりは1行ー現代の巨大木簡とも呼ぶべき作品の姿を見る時、日本での仕事が着々と成果を挙げていることを目撃する。心の中で静かに快哉を叫びつつ、この展覧会のよき成果を期待する。
加藤堆繋書展ー言葉への往還ー
2016年01月08日 (金) ~2016年01月11日 (月)
11時〜19時(初日14時から、最終日16時まで)
東京芸術劇場5F展示ギャラリー1
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1−8−1
TEL 03-5391-2111
加藤堆繋 略歴
1991 東京学芸大学大学院修了、渡米
1992 ニューヨーク大学大学院で美術を専攻
2011 個展ー臨界への試行ー(Gallery Concept21)
2013 個展(韓国ソウル、中国上海)
現在 東京学芸大教授