石川九楊展 -書と酒器と源氏物語-

書家であるとともに書論・書史の第一人者である石川九楊は、常に「書く」ことと向き合い続けています。確たる理論にもとづいた革新的な制作から生み出される、抽象画のような、音楽のような、その不思議な書体は、圧倒的な力でもって私たちが抱いてきた「書」に対するイメージを覆します。
歴史的に多くの書家によって書かれてきた漢字の「いろは歌」である「千字文」。石川九楊は、盃1枚に1字を書き、千枚の盃を集積した「盃千字文」という独自の作品を生み出しました。今回は、千枚の盃すべてを展示し、様々な書体で書き表したその全体像をご覧いただきます。
また、2008年に全55帖を書き上げた近年の代表作「源氏物語」から一部の作品を公開。21世紀のいま、あらためて書き記された「源氏物語」を通して、書の神髄も見えてくることでしょう。
本展では、二つの大作「盃千字文」と「源氏物語」を中心に氏の近年の多種・多彩な作品を紹介いたします。書の世界の第一人者・石川九楊の書をぞんぶんにお楽しみ下さい。

2011年6月11日(土)~7月10日(日)
伊丹市立工芸センター・伊丹市立美術館
10:00~18:00(入館は17:30、最終日は16:30まで)
月曜休館(祝日の場合翌日)
入場無料


名僧の書

古代の渡来僧から近世の禅僧まで、日本文化に多大な影響をもたらした傑僧・奇僧50名を取り上げ、その一点一字から書の本質を読み解きます。なごみ2010年1月号から2011年12月号までの連載「僧の書の力」に加筆修正と書き下ろし原稿を追加。それぞれの書を一字一字なぞることで、書としての評価を下すだけではなく、《筆蝕》から筆者の人物像までも読み取り、通説と照らし合わしながら、新しい人物像を提起する。政治家・知識人として日本の歴史に足跡を残した僧たちの真実の姿に迫ります。

●淡交社
●定価 2,625円 (本体価格 2,500円)
●判型 A5判
●ページ数 287ページ

書 文字 アジア

 

書の美はどこからくるのか。戦後最大の思想家と現代書の鬼才による幻の白熱討議、全十二時間!良寛、副島種臣、高村光太郎、宮沢賢治、岡本かの子、井上有一―などの書字の構造を読み解き、文字や言葉が孕む本源的問題に迫るとともに日本的なるものの深層を浮彫りにする。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

吉本/隆明
1924年東京生まれ。東京工業大学電気化学科卒業。詩人・評論家。2003年『夏目漱石を読む』で小林秀雄賞、同年『吉本隆明全詩集』で藤村記念歴程賞、2009年宮沢賢治賞を受賞

石川/九楊
1945年福井県生まれ。京都大学法学部卒業。書家・評論家。京都精華大学教授。1990年『書の終焉―近代書史論』でサントリー学芸賞、2002年『日本書史』で毎日出版文化賞、2009年『近代書史』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

●共著:吉本 隆明氏
●筑摩書房
●定価 2,415円 (本体価格 2,300円)
●判型 四六判
●ページ数 272ページ

二重言語国家・日本

 

日本語は書字中心言語であり、欧米語は声中心言語である。また、日本語は語彙的には漢語(中国語)と和語に分裂し、構造的には漢語の詞を和語の辞が支える「二重複線言語」である。日本語の根本に文字=書字を置き、政治・思想を含む日本文化の特異性とその深奥に迫った、衝撃の日本論。

●中公文庫
●定価 800円 (本体価格 762円)
●判型 文庫版
●ページ数 288ページ

説き語り日本書史

鑿で刻る書に始まる三千五百年の厚みをもつ中国の歴史に楷行書の時代になってから途中乗車し、いち早く近代化することによって、中国書史から途中下車したのが、日本書史である―三筆、三蹟、俊成、一休、良寛、さらには明治の元勲まで。古代から近代にいたる日本書史のダイナミックな流れを一望に収める。思索する書家がやさしく語る日本書史の入門編。

 

●新潮社
●定価 1050円 (本体価格 1000円)
●判型 四六判変型
●ページ数 174ページ

Taction

 

内容説明(英語)

You have in your hands an unprecedented account of the history of East Asian calligraphy. Here is a book every bit as accessible and fascinating for noncalligraphers and for individuals unversed in kanji as it is for calligraphers and for kanji-literate readers. The author, Ishikawa Kyuyoh, speaks of “the drama of the stylus” [brush and chisel], and he brings that drama alive by positioning it in compelling context: historical and spiritual, as well as artistic and cultural. Ishikawa has been a leading light in the calligraphic firmament for more than 40 years. He has continuously highlighted new expressive possibilities through work that is at once avant-garde and firmly rooted in calligraphic tradition. As interpreted by Ishikawa, calligraphy’s spiritual orientation engenders a powerful creative tension. “The calligrapher’s tension,” he insists, “is part of the spiritual awareness that is inseparable from the act of writing. It is the unrelenting self-scrutiny of the calligrapher who would fulfill a commitment akin to a holy vow.”

●Waku Miller 訳
●長銀国際ライブラリー叢書
●定価 2,500円 (本体価格 2,381円)
●判型 23.2×15.8×2.6cm
●ページ数 324ページ

万葉仮名でよむ『万葉集』

万葉名歌の知られざる姿―万葉仮名とは独自の表記体系であり、変容のダイナミックスをうちに宿した、「異形の漢字」である。漢字歌の姿に戻ってよみ直すとき、気づかれなかった意味とイメージの奥行きが如実に現れる。万葉仮名の書記法から女手=平仮名の成立へ。その過程に、新しい表現への欲望に突き動かされた、創造的な工夫と試行を掘り起こす。それはまさに、日本語の個性が誕生する出来事にほかならなかった。書字の現場から、新たな意味と文体と韻律の生成を追跡する、日本語創世記。

●岩波書店
●定価 2,730円 (本体価格 2,600円)
●判型 19.2x14x2.2cm
●ページ数 240ページ

近代書史

第36回「大佛次郎賞」受賞!!

すべては本書への助走だった。――東アジアの文化の根幹をなす「書」は、近代にいかなる軌跡をたどったのか? 日本の近代・現代の書の歴史を、専門書道家だけでなく文学者や画家など知識人の書跡、生活者の日常書字や印刷文字までも含めて、表現された書の丹念な読解により初めて全体として捉えた、前著『日本書史』に続く石川九楊の絢爛たるライフワーク。

「大佛次郎賞」選考委員による選評:

【池内了氏:「全体を普遍的に把握」】
書については全く素人で、「書は人格なり」との風潮に反発を覚えていた私であったが、この本を読んでいるうちに書の世界の奥深さと拡がりに感じ入り、知らず知らず引き込まれてしまった。
著者の方法は分析的であると同時に統合的である。……(中略)……近づいて一点一画を見つめるとともに離れてその全容を眺め、二つの視線を重ね合わせる。そして、そこで得た感懐を多様な言葉を駆使して的確に表現する。その意味では、実に科学的な書論とも言える。……

【川本三郎氏:「美の本質に熱く迫る」】
書の世界とはこんなにも深いものだったのか。
近代の書のすべてを語り尽くそうとする大著、巨大な本だが、量もさることながら何よりも圧倒されるのは、書の美を究めたいという石川九楊さんの熱気だ。
これほど熱い研究書はそうはない。書の美を追究する。なぜある字は美しいと感じ、ある字は美しくないと感じるのか。石川九楊さんは美の本質に迫ろうとしている。……(中略)……
最後に石川九楊さん自身の書が紹介されているが、その自由奔放な書には「これが書か」と仰天させられる。

【高樹のぶ子氏:「新しい世界見えてきた」】
思いがけない方向から不意打ちをくらった。書は「美学」ではなく「文学」であり、「造形」ではなく「言葉」である。目から鱗が落ちた。鱗が落ちた目に、新しい世界が見えてきた。書をする筆の先が書家そのものになり、精神と肉体になり、言葉を語る声になり、さらには人生になっていく。……(中略)……
「書」が「言葉」だと知ることで、書かれたものがたちまち人格と人生を持つこの魔術的な革新は、実は創造と想像の力に負っている。白紙に黒く残された文字の化石から、書家の人生と人格を再生させるには、言葉をよすがとする強力なフィクション構成力が必要で、もっとも古めかしく見える作業の裏でフル稼働する、小説家と同質な才能が、書に無知な人間をも惹きつけてやまない。

【山折哲雄氏:「尋常ならぬ自信と覇気」】
……文字通り刻苦精励のたまものである。これらの仕事は「書」という問題をひっさげて、東アジアに広がる漢字文化圏の全体を睥睨する勢いを示している。その自信と覇気は尋常なものではない。……(中略)……明治以後のわが国の書が「近代」といかに格闘し、どこに表現の可能性を求めてきたのかを、柔軟な筆致で詳述している。
冒頭に良寛の書をもってきて序論を展開しているのも秀逸であるが、最後に石川氏自身の書を掲げて創作の秘密を解き明かしているところには驚かされる。……

●名古屋大学出版会刊
●定価 18,900円
(本体価格 18,000円)
●判型 A4判・上製函入
●ページ数 776頁

日本書史

第56回「毎日出版文化賞」受賞作!東アジアの文化の根底をなす書は、「弧島」の舞台でいかなる劇を繰り広げたのか? 書を筆蝕の美学と捉える視点から、古代から明治初年までの代表的作品に定着された精神の軌跡を、その表現に即してひとつひとつ丹念に明らかにし、それを通じて日本書史の全体像を提示した、著者のライフワーク。
続篇『近代書史』(名古屋大学出版会刊、2009年)の前提となる、重要な著作。

「毎日出版文化賞」選評【選評者:松本健一 氏】:

『日本書史』は、漢字ではなく、書字を東アジアの文化の根底にとらえ、その「書」の文化が日本でどのような展開をみせたかを説いた、画期的な文化史である。
しかも、その日本の「書」の考察から分かることは—日本書史は中国書史の辺縁にあって、小さく、ささやかで、いくぶん歪んだものである。これは、日本書史が中国文化に途中から入り込み、そうして東アジアのなかでは「いち早く近代化を達成する」ことによって、途中から下車した事情によっている、と。
著者の書史は、具体的な「書」の分析をともなって、鮮やかである。たとえば、頼山陽の「修史偶題」は、江戸時代の「唐様」の第一級品だが、にもかかわらず「ああ日本の書だなァ」とおもわざるをえない。また、幕末の三筆のひとり巻菱湖(まきりょうこ)は、「近代の習字教師の祖」にすぎない、というように。(松本健一 氏)

●名古屋大学出版会刊
●定価 15,750円
(本体価格 15,000円)
●判型 A4判・上製函入
●ページ数 604頁

中國書史

書とはどういう芸術かの原理的・歴史的解明に努めてきた著者が、中国の書作品の微細かつ精緻な解読を「本論」に据え、前後に中国殷代から清代までの書の具体的・理論的展開と日中の書の比較による表現としての書の本質的・必然的展開過程を配した、前例のない画期的な書史・書論である。芸術としての書は本書によって初めて現代性をもつ。

●京都大学学術出版会刊
●定価 10,194円
(本体価格 9,709円)
●判型 A4判・上製函入
●ページ数 462頁